息の管 from kanako hatakeda on Vimeo.
息の管
わたしは息をしている。
これまで、からだを動かして
文字を書いたり、線を引いたりしてきた。
わたしにとってこの動きはなんなのだろうか。
高校時代、吹奏楽部に所属していた。
肺活量を増やすために毎日、楽器を触る前に
必ずしていたトレーニングがあった。
仰向けからすこしだけ上体を起こした体勢で
息を4拍で思いっきり吸って
16拍で吐き出すというものだ。
息を吐き出す量は必ず一定でなければならない。
息の、まっすぐな管をつくる。
からだじゅうの神経と意識と筋肉を
すべて息のことに集中させる。
60のテンポのメトロノームと
わたしの息の音だけの世界。
からだの全部が息の管となり
じわじわと外に出て行く感覚。
あのトレーニングがわたしにとっての
動きの基となっている。
わたしのからだ、
口元から足先までを使って動いたこと
そこで書いた文字や引いた線は
すべて息の管のなかにある。
わたしは息をしている。